脩「変わらないんじゃないですか?
冴島先生のような名医も
死に直面した事のない家族も
変わらないですよ。
目の前で死にむかう大切な人の
姿を見せられてしまえば
医者もただの1人の人間です。」

雅喜「何か分かったわ。
あんたがどうしてこの病院で
若先生なんて呼ばれるのか。
‥覚悟が違うんだな、あんた。」

脩「覚悟?」

雅喜「俺は小さな町医者の息子。
あんたは大病院の跡取り息子。
俺の親父はせいぜい肺炎に
なりかけた老人の命を救うくらいの
人間だけど、あんたの父親は
幼い命もくたばりそうな老人の命も
幅広く救う人間だ。
幼い頃に見てきた光景がまるで違う。」

脩「でも、俺はどちらかと言うと
雅喜先生寄りの人間ですよ。
冴島先生とは違う。
俺はいつも父親が助けなかった
命を見てその程度なんだって
思ってましたから。」

もしくは、この御曹司も
俺と同様に医者という仕事に対しての
不安を拭えないのかもしれない。