ものすごく困った。
そんな大切な決断を俺に
委ねられても困ってしまう。
でも、俺は医者だから...

蒼太「冴島先生が仰ったのなら
その通りです。今、手術を受けたとしても
助かる確率は50%のままです。」

村木「冴島先生の意見ではなく
柳瀬先生はどう思いますか?」

蒼太「え?」

村木「あなたはいつも私の事を
気にかけてくれた。冴島先生が
忙しい事は分かっています。
だから、私は一緒に将棋をしたり
くだらない話に付き合ってくれる
柳瀬先生の意見を聞きたいんです。
柳瀬先生の想いを聞かせてくれませんか?」

蒼太「俺の想いですか?」

村木「柳瀬先生は今から私が
手術を受けるべきだと思いますか?」

ここには誰もいない。
冴島先生も小林先生も
西井先生も誰もいない。

今、目の前のこの人を
助けられる人間は俺しかいない。

慰めの言葉をかけたかった。
だけど、言えなかった。

自信がなかったから。

蒼太「· · ·俺は· · ·可能性があるのなら
村木さんの事を助けたいです。
明日も笑顔の村木さんに会いたいです。」

村木「· · ·柳瀬先生。」

蒼太「· · ·はい。」

村木「· · ·たすけて· · ·下さい。
明日も笑って柳瀬先生に会えるよう
私の事を助けて下さい。」