涼太に聞いた駅に着いた頃には
もう随分と時間が経っていた。
駅前にあるドーナツ屋に
息を切らした男が入ってくる光景は
不気味で仕方がないらしい。

店内にいた客は俺の事を
ジロジロと見ていた。

もちろんそこに稀はいない。
俺はいつもあと一歩の所で
稀の腕を掴めない。

行く当てのない俺は最近
東京で一人暮らしを始めた
蒼太の家へと向かう。

東京には何度も来ているおかげか
割と土地勘はある方だった。