「え、葵ちゃん…?」

確か、美影の生みの親の子どもだっけ、と思いつつ様子を見続ける。

「美影お兄ちゃんに初めて会った日のことは覚えてないんだけど、良く両親から美影お兄ちゃんの話を聞かされるんだ…何で、美影に辛い思いをさせてしまったんだろうって…」

美影は、生みの親に疑いの目を向けた。…信用出来ないよね、やっぱり。

「本当なんだ…信じて欲しい!」

2人は、美影に頭を下げた。美影は、「はぁ」とため息をついた。

「僕に何回、同じことを言わせれば気が済むんだ…」

美影の声は、とても低く、とても冷たい。美影が瑠梨に告白された時よりも遥かに。美影の声は、鋭く尖った刃のようにも見える。

「僕と英太で遊んで、僕を突き飛ばして…!愛してもくれなかったでしょ!?そんな人に大事だ、とか大切だ、とか言われても信じられないよっ!!」

美影の生みの親は悲しそうに笑うと、美影を突き飛ばした。美影は、その場に座り込んで震えていた。無意識だろう。

美影の生みの父は「やっぱり鋭いな…美影は」と言って冷たく笑って、去っていく。葵ちゃんは、戸惑いを隠せないまま美影の生みの親の背中を追いかけた。

「美影…!」

私は、美影に寄りかかった。美影は、驚きもせずに私を見ている。

「やっぱり、付いてきてたんだね…」

美影は、泣きそうな顔で私を見る。私は、そっと美影を抱きしめた。そして、美影の背中を優しく叩く。

美影は、泣きじゃくった。私は、それだけ生みの親が怖いのだろう、と思いながらずっと美影を抱いていた。