自己紹介なんてしなくても、
みんな私の名前を知っていた。


だから佐野くんの反応は新鮮で、

この人に私を知ってもらいたい。

そう自然に思った。


「桐谷優華です!仲良くしようね!」

「あっそ。」


だけど佐野くんの反応は冷たくて、

会話はそこで終了。


普通だったら、『何この人!感じわる!』
ってなるところだけど、

なぜか、佐野くんには思わなかった。


むしろ、仲良くなりたい。って思った。


その日から隣の席な事をいいことに、佐野くん観察の日々。


佐野くんは、
長い前髪のせいで目なんてほとんど見えないし
一年中マスクをしているから
ちゃんと顔を見た事がない。


それに、今時こんな高校生いる?ってくらい
シャツのボタンは上までとめて、
ズボンも腰パンしていない。