未知の世界6


『あと少しでアメリカだね。』






「はい、あっという間ですね。」







休憩室でお父さんと進藤先生に向かって座りながら話をする。






『向こうでのことなんだけどね。』






「はい。」






『僕たちも経験してる通り、あちらでの仕事は、ここを遥かに超える忙しさだと思う。』






「はい。」







『そして文化というか環境というか…日本と違って、かなり自己主張をしていかないとかなちゃんの意見はもちろん、SOSだって届かないところだと思うんだ。』






お父さんが意味を含ませて話す。







『きっと一年もあればかなちゃんの体調は何度かうまくいかないときだってくる。』







「はい…。」







『だからね、こちらから私の知ってる先生や一緒に行く先生にかなちゃんのカルテを丸々送りたいと思ってる。』







「へっ!?」






思わずビックリした。





だって…アメリカにカルテが行くってことだよね?そして、医師と行くけど患者としても行くってこと?






『もし、何も伝えないままあちらに行って、かなちゃんの体がもたなかった時、きっとすぐに治療に移らないといけないと思うんだ。
そんな時にこちらからデータを送るよりは、あらかじめ送っておいたほうがいいと思うんだ。』






今度は進藤先生からの説明。






言ってることわかるんだけど、患者として行くってこと?






『どうかな?』







「………えっと、私は………患者として、行くってことですか?」






『え?』






今度はお父さんが驚く。






『いや、そういう訳で言ってるじゃないけどな。
そうじゃなくて、何かあったときに頼れる先生を向こうで作っておきたい。その先生が困らないようにするためにも。






そして、日本と同様、定期的にメイソー病院で受診もして欲しい。』







「……受診は…した方がいいかと、私も思ってましたが。」







『向こうの医者もかなちゃんのことを一から調べるよりいいと思うよ。』







まぁそれはそうだけど。






『どの先生にお願いするかは決まってないけど、向こうの病院に着いたら、向こうの先生からかなちゃんに声をかけてもらうようにするよ。




きっと、かなちゃんも担当の先生を探す余裕はないだろうし。』






そうだろうな…。きっと…。







「分かりました…よろしくお願いします。」







『うん、さっそく最後の検診をしてから、カルテを送るよ。』






「へっ!?」







明るくなったお父さんたちの顔。そこから飛びてできた言葉に、突然過ぎて驚いた。






今から……。検診!?