『で、いつから?』
久しぶりに二人だけで向き合って話す。
「2ヶ月後です。そこから短くて10ヶ月、長くて………一年。」
『その短くて、と長くて、は、誰が決めるんだ?』
ハハと笑うように言う。
「向こうの病院の研修の受け入れ状況に応じて…と言うことらしいです。」
『かなりアバウトだな。アメリカだな。』
そう言いながらテーブルの上のコーヒーを一口飲むと、再び私の方を向く。
「で、かなは大丈夫なのか?」
真っ直ぐとした瞳で私を見ている。
この瞳は私の夫、孝治さんである時。
「えぇ。もうすっかり良くなりました。」
『分かった…。でも、必ず連絡はするんだぞ。』
「はい…。忙しくない時は…。」
『まぁ、そうなるな。最初は救命だから、携帯を見る余裕もないだろうな。
それから、体が辛くなったら必ずその病院で診てもらうんだぞ。
絶対にほかっておくなよ。』
そう言って再び私を見つめるのは……
医者の孝治さん。
『返事は?』
「は、はい。」
『親父が知り合いに連絡しとくみたいだから、大丈夫だとは思うけど………』
他に色々と言いたそうにしてる。
「一度行ってますから、何となく勝手はわかります。」
『一年もあるけど、きっと帰国は無理だと思う。
………まぁなんかあれば、その、連絡しろ。』
「はい。」
『同じところで同じ空気ばかりじゃなくて、息抜きと思って違う環境で生活して働くのも悪くないからな。』
かなり違う環境だけど、気分転換だと思って…頑張ろう。
『やごな病院の第一だけじゃなくて、第二からも数人行くみたいだから。』
それは知らなかった。知ってる人、いるのかな。
なんて思いながらその後続いた孝治さんの留学での注意事項について聞き終わる頃、日付が変わろうとしていた。



