少し経っても孝治さんは会議室から出てくる気配がなかった。再び会わないように立ち上がり部屋を目指す。






痛い……。






食事の摂りすぎってことはまずないだろう、この痛み。昼は食べれてないし。
とりあえず今は部屋に戻るしかない。





トボトボと廊下を歩いていると、






『あ、』





前方から石川先生が歩いてくる。





うわ、こんな時に。
耳が聴こえてるって知ってる?それとも知らない?
どっちなのか分からないので、こちらから声は掛けられない。でもスルーすることはできない。





『どうだ?調子は』





こちらの心配はよそに普通に話しかけられる。
何か返さなくてはと咄嗟に答える。




「あ…はい。だいぶ…良くなりました。」





声はかすれかすれで何とか話す。






『そうか?元気って顔色じゃあないけどな。
まぁ、佐藤先生が主治医なら問題ないだろうな。 
ゆっくり休んで、しっかり治して戻ってこいよ。』






「は、はい。ありがとう…ございます。」





返事をして通り過ぎる。





耳のことは何も言われなかったけど…石川先生が私の耳が聴こえると知ってるということは、少なくとも私の病状を知ってる先生方はみんな知ってるってことだろう。





はぁ…。






「っつー………」






キリキリする胃を軽く撫でながら病室に向かった。