マンションの前でタクシーに乗ったままのたけるとまいに、おやすみを告げて、エレベーターで部屋に向かった。





幸治さん、寝てるかな……。





そっとドアを開けて、靴を脱ぎ、リビングに入って荷物を置いた。
部屋は薄暗い電気が点いていた。





やっぱり寝てる…か。





部屋には行かず、そのままお風呂へ。
浴室の隣には、洗濯物を干した後にそのまま服を収納できるスペースがある。
そこに掛けてあるパジャマを取り込んで、脱衣所へ。





追い炊き…もったいないかな。





いつ幸治さんが入ったのか分からなかったけど、私一人が入るのに追い炊きするのももったいないと、冬の厳しい寒さがまだ残っている頃なのに思ってしまった。





ちゃぽんっ……




「あ、結構冷た……」





これ以上浸かっていても温まることはないと思い、シャワーを浴びて出る。





さぶい〜





急いでパジャマを着て、タオルで頭を乾かして…リビングへ。




あれ?電気が点い……た?




『おかえり』





リビングに入ると同時に電気が明るくなって、幸治さんが眠そうな顔で立っていた。





「ただいま。
……起こしちゃってごめんなさい。」




ソファにかかったコートやカバンを慌てて片付けようとすると、





『おい、頭……。』





腕をガッチリ掴まれて頭を指差される。




『乾かさないと風邪引くぞ』




「クシュン!」





幸治さんが言い終わると同時にクシャミが出た。
そしてチラッと幸治さんを見上げると……




ほら、言ったこっちゃない。髪を乾かさないからだ!





という顔。





「ごめんなさい。」




ズズっと鼻をすする。
それと同時に幸治さんが私の頭をタオルでわしゃわしゃやり始める。




「わ、わ、わ、私やりますから。」





『いいよ。ソファに座れ。』




大人しく座っていると、浴室から幸治さんがドライヤーを持ってきた。
ソファの後ろに立つ。




こういうところが優しい。ただ、後ろに立たれるのは怖いかも。
と思っていたものの、髪を優しく慣れた手つきで梳かす。





その手の動きに終始ドキドキしっぱなしだったのに、疲れが一気にやってきて、ウトウトし始めた。





ふわふわした気持ちから眠りに入ろうとしたところで、今度は体がふわっと浮いた。





「あ。」





幸治さんに抱き上げられたことに気づくと、目は完全に覚めた。





「じ、自分で歩けますからっ。」





久しぶりに幸治さんの温もりに、恥ずかしさを感じて慌てる。
ジタバタしても動じない幸治さんが、ギロっとした目で私を見た。





怒ってる……?






『風呂、焚いてないだろ?』





「えっ!?」






『追い炊きだよ。そのまま入っただろ?』





コクリと頷いて返事する。





『体が冷えてるぞ。』





そう言うと、前を向いた。
それ以上何も言われることはなく寝室のベッドで降ろされた。