消灯前、かなの部屋には就業後からずっと幸治がベッド側に座って、かなの手を強く握りしめていた。
日中は暑さが続いているが、夜になると肌寒さがまだ残っている。
一年中、同じ気温を保っている病室。
その中で何時間も高熱でうなされながら、意識が戻らないでいる。
『かな……早く戻ってこいよ。』
そう言いながら、かなの手を祈るように両手で握る。
その声に応えるように…
ピク……
とかなの指が動く。
幸治が顔を上げ、手を確認する。
ピクッ……
再び指が動いた。
『かなっ!かな!』
さらに瞼が微かに動くと、かなの目がゆっくり開いた。
『かな……。』
涙ながらにかなの名前を呼ぶ。
「こ、幸治さん……?」
かながかすり声で応える。
『あぁ、良かった。』
すぐさまナースコールでかなが意識を取り戻したと連絡を入れる。
そして、白衣のポケットから聴診器を取り出して聴診をする。
『大丈夫そうだな。』
「あれ?幸治さん……どうしたんですか?」
かなは状況が読めていないが、幸治が今に至るまでを説明すると、思い出した。
「あれ、お父さんは?」
『日中、ずっとここにいたから、今は医局で休んでる。』
と言ったものの、連絡を受けてすぐにやってきた。
『かなちゃんっ!』
勢いよく入ってきたお父さんに、かなはつい笑顔になった。
『良かった、良かった。』
すかさず席を開ける幸治の代わりに、お父さんが座り、聴診を始めた。
『うん、もう大丈夫そうだな。熱も下がってるようだし。』
「はい…。」
大丈夫でなかった時のことを思い出せないけど…。まぁ、お父さんがいいと言ってるのだから、いいんだろう。



