未知の世界6


昼ご飯が運ばれてくる。
お父さんもそろそろ昼休憩かな?と思いきや!





「お、お弁当……。」





『あぁ、お母さんが作ってくれててね。お父さん、海外生活が長いから肉料理ばかり食べてきて、日本に戻ってからは健康に気をつけてるんだよ。』




と言いながらもお弁当の蓋を開けると、大きなお肉が入っている……。
ご飯の量も半端ないし。





幸治さんも食べるけど、そこまでの食欲はない。





体つきだけ見ていると、日本人というより欧米人。英語を話すところを見たときは、産まれも育ちも欧米なんじゃないのかと思ってしまう。






「お父さんはどこの出身なんですか?」




ホントは日本じゃないのではと半信半疑で聞いてみた。





『お父さん?僕は九州だよ。』





「九州…初めて知りました。いつからこの街にいるんですか?」






『大学だよ。かなちゃんと同じ。
大学進学で九州を出て、この病院で働いていたお母さんと知り合って、この街で生活してるんだよ。』






「そしたら、九州にご両親もいるんですか?」





『いや、もう二人共亡くなってね。幸治が小さい頃に。
だけど、親戚は九州にいるよ。』






「そうなんですね。」






私のおじいちゃんおばあちゃんという方はいないんだ。義理のだけど。





『どうして?』




「え?」






『どうして聞いたのかなって思ってね。』




「あ、いや……その。
私って、一体どこで産まれて、どこで育ったのかな……って。
というよりも、両親って誰なんだろうって。全く覚えてなくて。





あっ!でも言わないでください!
過去のことは思い出さないようにしたいので……。すいません。」






そんなことを言っている間に、なぜだか涙が零れ落ちる。





『うん、分かった。言わないから。聞きたくなったらいつでも聞いて。』






「はいっ……。」






涙を拭いて、目の前の食事に向き合う。






………………。







『さあ、食べてね。』






「……はい。」






相変わらずな量になくなる気がしない。