昼ご飯が運ばれてくる。
お父さんもそろそろ昼休憩かな?と思いきや!
「お、お弁当……。」
『あぁ、お母さんが作ってくれててね。お父さん、海外生活が長いから肉料理ばかり食べてきて、日本に戻ってからは健康に気をつけてるんだよ。』
と言いながらもお弁当の蓋を開けると、大きなお肉が入っている……。
ご飯の量も半端ないし。
幸治さんも食べるけど、そこまでの食欲はない。
体つきだけ見ていると、日本人というより欧米人。英語を話すところを見たときは、産まれも育ちも欧米なんじゃないのかと思ってしまう。
「お父さんはどこの出身なんですか?」
ホントは日本じゃないのではと半信半疑で聞いてみた。
『お父さん?僕は九州だよ。』
「九州…初めて知りました。いつからこの街にいるんですか?」
『大学だよ。かなちゃんと同じ。
大学進学で九州を出て、この病院で働いていたお母さんと知り合って、この街で生活してるんだよ。』
「そしたら、九州にご両親もいるんですか?」
『いや、もう二人共亡くなってね。幸治が小さい頃に。
だけど、親戚は九州にいるよ。』
「そうなんですね。」
私のおじいちゃんおばあちゃんという方はいないんだ。義理のだけど。
『どうして?』
「え?」
『どうして聞いたのかなって思ってね。』
「あ、いや……その。
私って、一体どこで産まれて、どこで育ったのかな……って。
というよりも、両親って誰なんだろうって。全く覚えてなくて。
あっ!でも言わないでください!
過去のことは思い出さないようにしたいので……。すいません。」
そんなことを言っている間に、なぜだか涙が零れ落ちる。
『うん、分かった。言わないから。聞きたくなったらいつでも聞いて。』
「はいっ……。」
涙を拭いて、目の前の食事に向き合う。
………………。
『さあ、食べてね。』
「……はい。」
相変わらずな量になくなる気がしない。



