未知の世界6

ガラッ




ドアを開く音にビクッとして目を覚ます。





『返事がないと思ったら、寝てたね?』






回診からどのくらい経ったのか、よく眠った気がする。





時計を確認してみると、一時間も経っていないようだ。






『お父さん、今日はここで過ごすから、寝ないようにね。』





「えっ!?」





お父さんの言葉にさらに目が覚めた。





『今日はもうかなちゃんの診察しかやることないし。後は医局でパソコンと睨めっこだから。』





いや、そうじゃなくて……。




トホホ……。ずっと見られてるってこと?





眠れるはずもないよ。





『進藤くんはもう少ししたら来るからね。』






「はい……そしたら、トイレに行ってきます。」






突然のお父さんの言葉に動揺を隠せず
一旦落ち着こうとトイレに部屋を出た。














マジか……。
これは大変なことになったな。
もしかしたら、今日だけじゃないかもしれない…。





心を落ち着かせるのに、結局長いことかかってしまったけど、さっきの状態でずっと同じ部屋ではさすがに……。





いろんなことが悶々と頭をよぎる。








そろそろかな、と戻ってみると……。





『かなちゃん、おはよう。
少し聴診させてね。』





という進藤先生と





『遅かったね。』





と若干のお怒りのお父さん。





お父さんの怒ってるところは、あまり見たことがないけど、昨日に続いてのことなので、まぁ慣れ始めてはいる。






『はいはい、寝て寝て。』





そう言われベッドに横になる。






ニコニコした進藤先生が聴診を始める。






『吸ってー吐いてー』






お父さんが仕事していて、進藤先生がわざわざ来てくれて眠れるはずもないのに……気付くと睡魔が襲っていた。







『はい、いいよー。』







眠い……。






睡魔に負けて、再び眠ろうとすると。






『かなちゃん、起きてっ。』





今度は進藤先生に起こされる。






私が寝落ちした短時間で、二人は今の私の胸の音について話したようで…。






進藤先生はお大事にーと言いながら部屋を出て行った。






一体どんな音がしているのか、聴診器さえあれば聞くことはできるけど、勇気がなくて聞けない。






お父さんがわざわざ進藤先生を呼んだと言うことは、まあ、それなりに悪い結果なんだと思う。





パソコンとにらめっこのお父さんはあまり私を気にしていない様子。






突然の入院で準備は幸治さんがしてくれていたので、何も持ってきていない。





やることなくて……退屈。






そして眠い……。





窓の外はこの街を充分に見渡すことができる。





私の行っていた高校も大学も見えるし、第2やごな病院も見える。建物が大きいというより、周りの建物がそんなに高くないからっていう理由だけど。






そもそも物心ついたときには、この街にいたけど……私ってどこが出身で…あれ?どこが出生地?





あれ?そもそもここ数年、考えることがなくて、あまり疑問に思っていなかったけど、私の両親ってなんていう名前なんだろうか。





お父さんに聞いたらわかることはなんだけど……。





高校生までの過去が酷すぎて、昔を思い出すことや、考えることをなるべくしないようにしてる気がする……。






施設にいた辺りまでは、お母さんのなんとなくの温もりを思い出して、悲しくなったりしてたけど。






正直……もう温もりもすっかり覚えていない。





お父さんは知ってるんだろうけど……。








『ん?どした?』






私の視線に気づいたのか、お父さんがこちらを向く。慌てて目を逸らす。






「い、いえ。何でもないです。」






『何?思っことはちゃんと言わないと、後々辛くなったりするんじゃない?』






いや、そんな深刻になることでもないし。今こんな話するのも……。






「本当に何でもありません。」






『そ……。』






何とか誤魔化してみた。