「佐藤さーん、起きてください。」
何度も呼んでもらってることは分かってるんだけど……眠くて起きられない。
もうすぐ回診だから起きるように、そして検温を済ませておくようにと……。
何とかして脇に体温計を挟むと、看護師さんは部屋を後にした。
その後ろ姿を見ながら、再び……眠りについた。
『起きなさいっ。』
頬をペチペチと叩かれて、目を開けると、
「ワッ!」
目の前にお父さんがいた。
さっきの出来事からどのくらい経ったのか分からないけど。
眠気が一瞬で冷めた。
『おはよう。
かなちゃん、起きてなくちゃダメだよ。
今朝の体調のことをちゃんと聞きたいからね。』
そういうと脇に挟まったままの体温計をお父さんが抜き出して、表示を確認する。
何も言わずに看護師さんに渡す。
何度だったのだろうか……。
『聴診するよ。』
いつもはお父さんが勝手に聴診を始めてるけど、これ以上怒られることがないようにと、自分でボタンを外す。
『はい、吸ってー。吐いてー。』
何度か繰り返される言葉は、まるで催眠術のように私を眠りに誘っていく。
静かな時間が過ぎていく。
『はい、終わったよ。』
パチンっと指を鳴らされたように、その言葉で催眠術は解けた。
『昨夜は眠れなかったみたいだね。他に変わったことはなかったかな?』
「発作ではないんですけど、喉が乾くと空咳が出ました。」
『そうだろうね…。少し雑音が目立つからね。
一度進藤くんにも聴診してもらうね。
それから、咳が出たら、その時に教えてね。』
「はい……。」
返事をすると次第に睡魔が襲ってきた。
もう終わりだし、眠っていいよね……。
とウトウトしかけたところで……
『こら、起きてなさい。
また今日も眠れなくなるよ。』
そう言われ眠い目をこすり体を起こした。
眠い……。
体を起こしても変わらず眠くなってしまう。
お父さんたちは部屋を後にして、そのまま私は眠りについた。



