『かなちゃん、ご飯だよ。』






何か聞こえると、目を覚ますと、そこには進藤先生がいた。






『起きた?晩御飯が運ばれてきたよ。』






「え?もうそんな時間?」






『うん、みんなが声をかけていたみたいだけど、起きないから僕が来たよ。




体起こして……』






といいリクライニングをゆっくり上げられる。






『食欲ない?』







「えぇ、家で朝ごはんをしっかり食べてきてしまって。」






『いやいや、朝ごはんって。もう晩御飯だよ。』





すかさずつっこまれる。






「寝てただけですし……。」






『正直なところ、忙しい毎日で食欲がグッと落ちてるでしょ。』






う……正解。






『僕もそうだけど、忙しいと食事摂る暇もなくて、食べないとどんどん食欲も落ちて。そんなときに風邪引いたりするんだよね。』






「えっ!進藤先生もそんなことあるんですか!?」





食欲不振とか風邪引くとか、進藤先生にはないフレーズだと思ってた……。






『僕は普通の人間の体質だからね。
どちらかというと、幸治くんや石川先生なんかは、鍛え上げた体をしてるから簡単には風邪引かないんじゃないかな?』





「確かに……」






前に風邪を引いたことのある幸治さんは、ものすごい速さで治ったし。
それも閏年よりもない珍しいことだった。





『みんな体を酷使してるとダメージも大きいんだよ。
かなちゃんばかりじゃないから…』




そう言うと私の頭に手をやった。




この温かい手にはすっかり落ちつかされてしまう。





『今はゆっくり休もう。』






「はい……。」





『ん?浮かない顔だね。』






頭にあった手が頬に移る。





「……アメリカに行く自信が、ありません。」






『ハハ、そういうことね。』






「今はみんなが周りにいるし、今回も幸治さんのおかげで、椎名先生もいてくれて岡本先生も私を気にかけてくれて。





前回アメリカに行ったときには、お父さんたちもいたし、ほとんどお客様と変わらないような対応で、忙しかったけど、本格的に医師として研修していた幸治さんほどではなくて。





あの時の幸治さん、帰ってきてたのかも分からないくらいほとんど病院にいたし…





私にそんなことできるのか。」







言いながらどんどん落ち込んでいく。





『そりゃ、自信持ってアメリカに行く人なんて、誰もいないさ。
たけるくんだって、不安に思ってると思うよ。




今度もきっと大丈夫。
お父さんがいた病院なんだし、向こうに知り合いの先生はたくさんいるから、君のことも任せられる医師はきっといる。




それに、この日本よりももっとすぐれた機械や技術を持ってる医師もいるんだから。大丈夫。』






そう言って私の頬を両手で包んだ。






少しして、顔を上げると進藤先生は聴診の準備をしていた。






『少しだけ聞かせて。』






胸元を数回聴診されると、すぐに終わった。






『うん、落ち着いてる。




よし、それじゃあしっかり食べてよ。』






そういうと進藤先生は部屋を後にした。