『う〜ん、どうしようかな……。』





体温を計り終えた頃に、かなは眠りに入っていた。





体温を確認したお父さんはリビングへ行き、幸治たちに相談していた。





『研修も後少しですしね。このまま入院すると最後まで参加できない可能性もありますけど……体調が回復してすぐに研修に参加できるか…っていうのもありますね。』






椎名先生が言うと、







『う〜ん、あいつのことだから、回復したら研修に参加するって言うだろうな。でも体調はすぐに悪化するんだろうけど、本人は絶対に隠すだろうし。




それで結局入院して…自分のことを責め尽くして……』





『悪循環に陥る。』






幸治の後にお父さんが締める。





『どちにしても入院させることになるんだから、本人の気持ちを少し聞いてみてどうでしょうか?』






椎名先生がお父さんに言う。






『そうだな。今まで本人の気持ちを聞かずに進めてきてしまったとこもあるし。』





と三人で話し込んでいるところに……







ガチャ





かながリビングに入ってきた。






『かな、寝てなきゃだめだろ。』






幸治が言うが、かなはほんのり赤い顔で首を振る。






「もう大丈夫だよ。」





見るからに大丈夫ではなく、早く寝たほうが良さそうなのに、無理をする。





『そしたらかなちゃん。少しここに座れるかな?』






ソファに座るよう促すお父さんのそばに歩み寄るかな。






『今ね、話してたんだ。かなちゃんのこと。』





涙目のかなが目を丸くしてお父さんを見上げる。





『このまま家で療養して、研修に参加してもまた体調を悪化させるんじゃないか…病院に行くのはどうかなって。




それともかなちゃんの体が少し回復したら、研修を最後まで受けて、それから入院して治すか。






かなちゃんはどうしたいかな?』





少し考えてから、






「研修には参加したいけど、お父さんたちが入院って言ってるってことは、相当悪いのかな。そうなら研修を最後まで受けるのは第二病院の先生方に迷惑をかけてしまうことになると思う。





それくらいなら、今は研修を諦めて、体を治す方に専念したい……。」






『かな……』






かなから積極的に治療する意見は今まで聞いたことがない幸治は、胸が熱くっていた。





「入院は嫌だけど……」






『ハハ、さすがかなちゃん。
研修は精神的にも体力的にもハードだなら、さすがにかなちゃんの体も悲鳴を上げてたんだよ。』






フォローするお父さんに、





「こんなことで悲鳴をあげてたら、仕事にならないです…アメリカなんて到底無理ですよ。」





溜めていた涙がこぼれ落ちる。






弱気なかなの頭を抱え込むように撫でるお父さんの胸で、かなはそのまま眠った。