次に目が醒めると、真剣な眼差しのお父さんが、私の胸元を開けて聴診していた。




『あ、起こしちゃったね。少し胸の音を聞かせてね。』






そういうと再び真顔になる。






普通に考えて義理のお父さんが、お嫁さんの胸を開いて聴診するなんて、側から見たら変態に見えてしまう。





しかし私とお父さんは、義理の親子の時もあるけれど、それよりも患者と医者という関係にもある。





お父さんはたぶん、義理の親子という関係で私を大切にしてくれて、さらに可愛がってくれているけど、それがゆえに、医師としてこの使えない私の体を大切に想ってしてくれているんだと思う。






そして息子の嫁という関係よりも、一度は自分の娘にしようとしたほど私を愛してくれているお父さんは、誰よりも私に優しく私の体を管理してくれている。






つくづく私は、この人たちによって生かされている気がする。






もし、この人たちに出会ってなかったら。もし、あの時、私が病院に行ってなかったら。






きっと私は心も体もズタボロになって死んでいたのかもしれない。






病院に行っていても、自傷行為を繰り返してた私を違う医師が診ていたら、今はここにいなかったかもしれない。






幸治さんだったから、その都度自傷行為を食い止めて、生きるためのレールを敷き詰めてくれたんだと思う。






そんなことを想うと、顔が熱くなってきて涙が出てきた。







『ん?かなちゃん、大丈夫?』







お父さんが目を丸くして、私のこめかみに流れた涙を拭いてくれる。






『ごめん、聴診が嫌だったかな?』





「いえ、そんなことありません。





大丈夫です……。」






そう言うと、聴診をしていたお父さんが手を止めて、私を起こそうと両肩に手をやる。






『どうした?』






優しい幸治さんに似た目のお父さんが、私を見つめる。





「いいえ、大丈夫です。少し思い出が頭をよぎって、涙が出てきたんです。
嫌なことじゃありませんから。」






そう言うと、それ以上は何も聞かれない代わりに、ギュっと優しく胸に私を抱きしめていた。





それだけで身体中が暖かくなって再び眠りそうになる……。






『ん?』






少しして背中に手を回したお父さんが、体を離して顔を覗き込む。






『ん?かなちゃん。少し顔が赤い……?』





ベッド脇にある棚から体温計を取り出して、私に渡してくれる。






今熱が下がらないと……明日までに復活できないよ……。






だから、お願い……






そう願いを込めて、脇に体温計を挟んだ。