『それだけで足りるのか?』
注文してすぐに出来上がったうどんを見て、反対側に座っている岡本先生が聞いてくる。
「はい、充分です。」
ホントか?という顔でたけるを見る岡本先生。
『これを完食できたらいい方だと思います。』
たけるが答える。
『はぁ?』
未だに信じられないという顔の岡本先生が、
『そうだそうだ、椎名先生も来るから。』
えー!?なぜ…。
と驚いてしまう。
『椎名先生って……』
たけるがボソッと呟く。
「この病院にいる間に、私の喘息を診てくださる呼吸器内科の先生だよ。
幸治さんの友達みたい。」
『そうなんだ。』
何か納得しているような顔のたける。
そんなことを話していると、椎名先生がお盆を持って、私たちのところに現れた。
『すいません、お待たせしました。』
椎名先生が岡本先生にそう言いながら、隣に座る。
たけるを椎名先生に紹介して、食事に手をつけた。
『えっ!?それだけ?
ってかそれって…子供用うどんじゃないのか?』
まぁそうだけど……。
「子供用は薄味で、汁も作り置きしてない方が多いので…。」
心臓の病気をして、未だに薄味や新鮮な食事に心掛けている、つもりで……。
『まぁそうか…それでも少な過ぎるから。』
と言い、まだ手をつけてないおかずの中で1つ椎名先生が私の丼に……。
ちくわのてんぷら……
『じゃあもう一つ……。』
と今度は岡本先生が私の丼に。
唐揚げ……。
「……あ、ありがとう……ございます。
でも……食べられるかな。」
と隣のたけるに助けを求めてみたけど、全く気にせず自分のご飯を食べている。
「たける〜。」
『それくらいは食べられるだろ。』
と椎名先生に言われる。
「たける〜」
と再び泣きつくと、
『いや、それは食べれるだろ……
まぁ、食べれなかったら食べてやるから。』
と私に甘々のたける。
『早川、おまえは甘すぎないか?』
椎名先生に言われて手を止めるたける。
『そうなんですよね、僕。
でも、医大の頃から知ってるんですけど。かなは変なところで無理して、後で大変なことになるのがいつものことで……。なので僕が逃げ場を作ってやらないと……。』
そんな……たける。私のことをそこまで考えてくれてるなんて。
胸がジーンと熱くなる。
『あ、最終的には同期の僕がいつも大変な思いをすることになるんでね、ハハ。』
と最後は照れ隠しか、それでも嬉しかった。
『無理するのか……?』
と口を出したのは椎名先生。
『研修も気をつけないとな。』
とギロっと私を見る。
ハハハ……ここでも監視してくる人ができたみたい……。
と視線を逸らした。