未知の世界6


目を覚ますと、院内の個室のベッドにいた。






あぁ…やってしまったか。





あれから寮に帰れず、そのまま入院したんだろうな。






研修中にやってしまった…。





ここに来てまで入院だなんて…。





そんなことを悶々と考えていると、扉が開き、ジャクソン先生が入ってきた。





『どうだい、お腹の痛みは。』





「はい、もう痛みはありません。
なので…寮に帰っても?」





明日も仕事だし、帰りたいな。
そんな気持ちで聞いてみると。




『ダメに決まってる。




とりあえず体調が万全になるまで入院。』






「えっ!?体調が万全って、もう大丈夫ですけど。」






『何言ってんだ。日本でのかなを知らないけど、
絶対にこっちに来てから痩せただろ?





体力も食欲も回復しなければ、いつまでもここにいさせるぞ。』






冗談の多いジャクソン先生の本気の顔。
私の目をみて、離さない。






私は耐えきれず下を向いた。







またベッドの上で食事を摂るだけ…。







それができないんだけど。






『とりあえず今日は胃を休めること。薬が増えるけど、必ず飲むこと。かな、分かった?』






頬を両手で包み、私の顔を前に上げる。







「……は、はい。分かりました…。」






『胃は穴が空きそうなくらい壁が薄くなってるし、全体がひどく炎症してたんだけど…?』







そ、そんなに…。






『どう?いつから痛いの?』







「う〜ん、最近は痛くなくて…。






日本で少し痛いくらいで…。」





『それはいつから?』






「アメリカに来る2、3ヶ月前かな。」







『ん?それって、入院してたころ?』







ハッ!?







そうか、カルテがあるからそのことも知ってるんだ。






迂闊に喋れない。






と思った頃にはもう遅くて…。






『かな?入院中に痛かったの?それって、孝治にも言ってる?』







「い、いえ…。そんなにすごく痛いって程でもなくて…ほんの少し痛っ、てなるくらいで…。」






a little よりももっと少しって単語が出てこないけど…たぶんジャクソン先生には通じてる、そう信じて説明してみるけど…






『はぁ?少し少しって、かなのカルテには痛いことは少し痛いとしか言わないし、よっぽどの痛みじゃないと痛いと、はっきり言わない、縮小解釈するってあるけど、こういうことだね。』






う………そこまで知られているなんて。しかもかなり細かいカルテ。ただでさえ病歴が多いのに…ジャクソン先生は私のカルテを隅々まで熟読してるな…。







「…ごめんなさい。」





『それも書いてあった!
すぐに謝るけど、反省してないって。その場しのぎだって。』






そこまで。
っていうか誰だ?そのカルテ書いたの。





たぶん、みんな思ってることだろうけど。





『とにかく、このことは孝治にも連絡しておくからね。研修中に胃だけじゃなくて体に異変を感じてすぐに言わなかったら、日本に戻すかるね。いい?分かった?』







そ、それは困る…私が一番そのことを嫌がることを知ってるんだな…。







「は、はい。それで…」





『ん?』






「退院の目処は?」






『全く立ってません!そんなことを考える必要はないから。
とにかく今は胃を休めること。






そして胃も肺も心臓も良くなったら研修に戻すから。それまではここに大人しくしていなさい。』






もうそれ以上は何も聞けず、黙っていると、ジャクソン先生は私の頭を撫でてから、部屋を後にした。






あぁ…私のせっかくの貴重な研修が…もったいないな。