未知の世界6






『かな、ちょっといい?』





その日の仕事を終えて机の上の書類を整理していると、ジャクソン先生に声を掛けられた。






部屋には当直の先生とまだ残っていた先生が数名いた。もちろんたけるもいる。






休憩所までジャクソン先生の少し後ろを歩いて着いていく。






『はい、座って。』





そう促されて休憩所に置かれた椅子に腰掛ける。






ジャクソン先生は反対側に。







『僕が何の話をしたいか分かるかい?』







真面目な顔で見つめられる。







「えっと…たぶん、私のことで。





私の病気のことで。」






そういうと大きく頷くジャクソン先生。






『なぜみんなに隠そうとするんだ?』






え?







『薬だって医局で飲めばいいのに、なぜ?』







「それは…




薬が…たくさんあるから…。





みんなに…色々と、聞かれると思って。」





うまく英語で表現できず…所々日本語。





伝わっても伝わらなくても…どちらでもいいのだけど。




『聞かれたらその通りに答えるまでさ。』





伝わってた…。





日本人と違って海外の人はYESかNOだということは、幸治さんから何度も聞かされていた。






ならばここはNOと言いたいところだけど、私の病気をみんなに隠すということ自体がこちらの人たちには理解できないのかな…。






ジャクソン先生が黙ったままの私を待ちきれず、






『かなはもっと自分を曝け出して生きていった方がいいんじゃないか?』






さらに突っ込んだことを言ってくる。






いや…なぜそうなるのか。なぜそこまで言われなくちゃならないのか…分からない。





だけど、その気持ちも言うことはできない。





『アメリカでは病気も障害も、みんな健康な人と同様に生きているし、何ら差別されることはない。





病気を持ってる医師はたくさんいるんだ。だからかなも…もっと胸を張って堂々と生きたらいいんだ。』






最後はもうそうすべきだと言う単語で訴えてくる。






ここまで来ると自分の気持ちを言う気にもなれない。






「そうです…ね。」






それ以上何も言えなかった。
ジャクソン先生は正当なことを言ってるけど、私にはそれが簡単にできない。






「そこまで考えてくださり、ありがとうございます。






薬はちゃんと飲みます…。体も大丈夫ですから…気にしないでください。





ごめんなさい。」






そう言って立ち上がると、その場を離れた。





これ以上いると胸が苦しくなる。





ジャクソン先生の言うように素直に生きたいけど、それができないし、そこを問い詰められるとものすごく胸が苦しい。






「はぁはぁはぁ…。どうしよ。」





走ったせいか胸が少し締め付けられた気がした。