SHRが始まり出席を取る担任。

「北村優斗ー」
「はーい」
自分の名前を呼ばれ、俺はいつも通り少し大きめの声で返事をする。

2ヶ月前までは俺の後に呼ばれてた
久保田の名前は呼ばれない。

チラッと後ろに座る涼太を見る。
俺の視線に気づいた涼太は
前見とけという視線を俺に向ける。


その視線に、目に、

光は全くない。






俺、北村優斗と涼太は小学生のガキの頃からのつきあいだ。
きっかけはバスケ。
ガキの俺は、たまたま母親に連れられて観に行った高校生の従兄弟のバスケの試合をみて、すっかりバスケにハマった。
すぐに学校のミニバスに所属した。


そこにいたのが、涼太だった。
当時5年生だった涼太は6年生に交じってレギュラーを獲得していた。

キレのいいパスにドリブル、
そしてゴールに吸い込まれる様に鮮やかなシュートを放つ涼太に、
俺は目を奪われた。

同い年なのに、俺とは全然違う。
後から考えたら、
小学2年生からバスケを始めた涼太と全くのド素人だった俺とじゃ全然違って当たり前なんだけど。

だけど、その時の俺にとって
涼太の存在は特別だった。
すっげー、とか
ヤッベー、マジかっけー、とか、
とにかく、まだまだガキの俺には、
涼太の存在は眩しかった。

人見知りとかなくて、どちらかと言えばコミュ力も高い俺はすぐに涼太と仲良くなった。

涼太と仲良くなってすぐに、
久保田の存在も知った。

涼太はバスケの練習がない時は
久保田と一緒にいる事が多かった。
一緒に下校し、その後遊んでいた。

衝撃だった。

小学生のガキなんて、異性とふたりで下校したり遊んだりしたら
たちまち噂になるし冷やかされる。
実際、そんな涼太と久保田を冷やかす奴らもいた。

だけど、ふたりはそんなのどこ吹く風で。

ただ、楽しそうに、嬉しそうに一緒にいた。

天気がいいと言って笑い、
お腹が空いたと言って笑い、
花が咲いたと言って笑い、
今日も楽しいねと言って、
笑っていた。





羨ましかった、
バスケも上手くて、
女の子とあんなに楽しそうに笑える涼太が。




あんなに楽しそうに一緒に笑いあって過ごせる相手がいる
涼太と久保田が、


俺には眩しくて堪らなかった。




涼太を通して、久保田とも少しずつ仲良くなった。

人見知りがさほどない俺や涼太と違って
人見知りでどちらかと言えば内気な久保田は、
それまで俺の周りにはいないタイプの女の子だった。

久保田は色んな事を知っていた。

「芹那はスゲーんだぜ!」

当時よく言っていた涼太の言葉。
そんな涼太の言葉に、恥ずかしそうに微かに頬を赤く染める久保田に、


俺の中に、今まで感じた事のない感情が芽生えるまで、
そう時間はかからなかった。



そして、その感情の正体を自覚するのも、

時間はかからなかった。