朝、目を開けると飛び込む真っ白な天井。
身体を起こすと飛び込む真っ白な壁。

…ああ、そうだ。
昨日、そのまま入院になったんだ。

夢では、
私の部屋で、私のベッドから起きて
着替えてリビングに降りてたのに。
玄関を出たら、ちょうど家から出てきた涼太と会って、
おはようって言って笑ってた。
そして、私は涼太の隣を普通に歩いていた、のに。


ベッドから降りると、ふらつく。
顔を洗おうと洗面所に向かうも、ゆっくりとバランスを取りながら歩くから時間がかかる。

夢の中では、
涼太の隣を歩いていたのに。
私も涼太も、笑っていたのに。


涼太の隣にはいられない

昨日、涼太に言った言葉が胸を痛い位に締め付ける。
もう、私は涼太の隣にはいられない、
そう思うと苦しくて苦しくてたまらない。
自分で言っといて勝手だ。
だけど、涙が勝手に溢れてくる。

涼太を傷つけたのは、
私なのに。



コンコン

「芹那、入るぞ」

ひとりの部屋に響いたドアをノックする音、
そして、お兄ちゃんの声。

「うん」

涙を袖で乱暴に拭い、笑顔を作る。

「起きてたんだな」

そう言って鞄から服やコップを出していく。

「とりあえずすぐにいる物だけ持ってきたんだ。
もうすぐ朝食だろ」

「ありがとう、お兄ちゃん」

「他にいる物は後から母さんが持ってくるから」

「うん、
ごめんね、朝早くから。
お兄ちゃん昨日帰ってきたばっかりで疲れてるのに」

「何言ってんだ」

そう言って優しく笑って頭を撫でてくれる。
大きくて暖かい、優しい手。
お兄ちゃんの手は、昔から安心する。


「ねぇお兄ちゃん、私のリュックって学校かな?」

荷物を片付けているお兄ちゃんを見て、
私が通学に使っているリュックがない事に気がついた。

「ん…?
ああ、多分学校だな。
昨日は付き添ってくれた先生も慌ててたみたいだし。
今日にでも俺が取りにいくよ」

「…私が取りにいっちゃ駄目かな?」

「え…?」

「私の荷物だし。
それに、先生にも迷惑かけたから謝りたいし…」

私の言葉に少し不安そうな顔をみせるお兄ちゃん。

「…分かった、
だけど、俺も一緒にいく。
それでもいいなら父さんと翔太に許可を貰ってくる」

「うん、ありがとう!」

「じゃあ着替えて準備しとけ、俺は朝食取りにいってくるから」

「うん」

お兄ちゃんが出てひとりになった部屋で、
制服に着替える。


ひとりになった部屋で、
私は昨日の中山先生がお父さん達に話していた事を思い出す。

(正直このまま今の学校に通うのも難しいと思います) ̄


…この制服を着て学校にいくの、
もう、最後、かな…。

そんな事を考えたら、
また涙が流れそうになって、
私は上を向いて必死に涙を耐えた。