俺の目の前には、

青白い顔で固く目を閉じている

芹那が、いた。


…これが、芹那…?

(おはよー、涼太!)

(もー、また宿題してないのー?)

(涼太ー、お弁当食べよー)

(お願い涼太!買い物つきあって!)

(涼太ー、怖い夢みちゃった…、どうしよ)

不意に頭の中に芹那の声が響く。
そしてその時の芹那の顔も、次々と浮かんでくる。

笑ったり、怒ったり、困ったり、泣いたり…。


(またね、涼太)


そう言って、笑った芹那が。





芹那の頬に触れる。

(くすぐったいよー)

そう言って笑ってた。


なのに、今は



固く目を閉じて、
頬の冷たさだけしか感じられなかった。





「…起きろよ、芹那」


ポツリとこぼれた言葉。

「…何、寝てんだよ、
マジ、冗談キツいって…」


信じたくない、
こんなの。

理解したくない、
こんなの。



だけど、

芹那の冷たい頬は、

二度と開く事のない目は、


もう二度と、


芹那と過ごす事が出来なくなった事を、


芹那の、

死、を、




嫌でも実感させたんだ。