「涼太の隣にはいられない」

芹那の言葉が胸に突き刺さった。

そんな事ない、
俺が芹那の隣にいたい、
そう言っても、芹那は困ったように眉を下げて笑った。
芹那に俺の気持ちを分かってもらいたい、
だけど看護師に面会は終了だと追い出される形で帰された。


どうやって家まで帰ったのかさえ分からない。
気づいたら部屋でひとり、電気も付けずに床に座り込んでいた。

頭の中は芹那の言葉で埋め尽くされてる。

「脊髄小脳変性症…」

聞いた事のない病気だった。
一体どんな病気なんだ?
本当に、
…治らないのか?

立ち上がり机の上のパソコンを開く。
脊髄小脳変性症…、
検索するとたくさんの情報が目に飛び込んでくる。



…何らかの原因で小脳が萎縮し、そこに存在する神経細胞が壊れていく
身体を動かすことが次第に困難になっていく、
悪くなる事はあっても、良くなる事はない、
発音も難しくなる、
歩けなくなり、立てなくなり、
食事もとれず、寝たきり、
この病気は完治した例がない………


バタンッ!!

力任せにパソコンを閉じる。


…何だよ、
何なんだよ!

完治した例がない!?

何でだよ!
何で、何で…

「芹那なんだよ…」

ポツリとこぼれた言葉は掠れていた。

芹那はこれから、病気に侵される日々を送るのか?
治らないと分かってて、リハビリしなきゃいけないのか?
学校はどうなる?
病気が進んだら、
今の生活はどうなる?

…芹那はこれから、
どんな気持ちで生きていく?

何で…、

こんなはずじゃ、なかったのに。

俺はただ、
芹那と一緒にいたかった。
芹那と一緒に、生きていきたかった。
それだけだったのに。

なのに、どうして…。

「…俺の、せいなのか…?」

あの時、俺が無理に芹那の運命をかえたから、だから…。

俺はこれから、
どうすればいい?

なぁ、芹那―。