片山さんが教室を出て、再びひとりになった教室は静まり返っている。



ぶっちゃけ迷惑
涼太の事いつまでしばりつけるの?
同情でしょ

片山さんの言葉が頭の中で繰り返される。


…分かってる、
私の存在が、みんなの迷惑になってる事位、
分かってるよ。
だけど、私は学校に通いたい。
友里や亜季と、
優斗君と、
涼太と、一緒に過ごしたい。
だって、今この時間はもう二度と戻らない。
高校生というキラキラした時間は、
今しかないんだ。

でも、そんな事を願うのは、
間違ってるのかな?
私はもう、みんなと一緒に過ごす事も、
許されないのかな…?


頭の中はぐちゃぐちゃで、
勝手に涙が流れてくる。
こんな顔、涼太に見られたくない。

「…顔洗わなきゃ」

教室を出てお手洗いへ向かう途中、話し声が耳に入ってきた。

「涼太ー!」

!!!

片山さんが涼太を呼ぶ声に、思わず隠れてしまう。

「何だ片山か」

「何だはないでしょー?
今から帰るの?だったら一緒に帰ろうよ」

「芹那待たしてっから」

「久保田さんなら帰ったよ」

え…?
どうして、そんな事…。

「は?んな訳ねーじゃん」

「えー、でもひとりで帰ってるのみたよ?
久保田さんもひどいよねー、普段あれだけ涼太の事振り回しといて、ちょっとの時間待つ事もせずに帰るとかさー」

どうして、片山さん…。
今すぐふたりの前にいきたいのに、
足が言う事をきかない。
金縛りにあったように、身体が動かない。

「それよりさー、映画みにいかない?
今、面白そうなのやってんだよね。
涼太、いつも久保田さんのお守り(おもり)ばっかりで最近ろくに遊んでないでしょ?
ね、いこっ!」

お守り…?
片山さんからみたら、涼太は私のお守りをしているように見えるんだ…。
もう聴きたくない、
そう思った瞬間私の身体は動いてふたりから遠ざかるように歩いていた。



どうして、あんな事まで言われなきゃいけないんだろう。
涼太は、片山さんの誘い、受けるの…?
そんなの、
そんなの…、
嫌…!!

フラッ…
!!!

醜い嫉妬してたからか、
私は階段を踏み外していた。


ドサッ!!


「キャー!」

「お、おい!大丈夫か!」

「誰か先生呼べ!」



「芹那!?」


薄れゆく意識の中、
確かに、涼太の声が聞こえた。