「あー、疲れたー!」
試合が終わり、俺は床に座り込み汗を拭う。

「サンキューな涼太!」
「どいたまー」

試合に勝ち、上機嫌のみんなと少し話した後、
俺は鞄の中のスマホを取り出す。

勝った事、芹那に自慢してやろう、
そう思った。

取り出したスマホの画面には家から何十回も着信が入ってた。

…何かあったのか?
不意に胸がざわつく。

尋常じゃない着信の数に戸惑いながらも、家に電話をかけた。

出たのは母親。

そして、信じられない事を叫んだ。



「芹那ちゃんが、
芹那ちゃんが事故にあったって…!」


一瞬、何言ってんのか分からなかった。

分からなくて、理解出来なくて
何も言えない俺に、
母親は運ばれた病院を告げる。


その瞬間、俺は走り出していた。


「おい!涼太!?」

後ろから俺を呼ぶ声にも気づかずに。





有り得ない位に心臓がドクドクと大きくて嫌な音を立てていた。
冷たくて嫌な汗が流れる。

「またね、涼太」
そう言って笑ってた芹那が頭をよぎる。


事故、とか…、
嘘だろ…!?
なぁ芹那、
嘘だよな…?




病院に着き、冷静じゃない頭で
どうにか受付に芹那の事を聞く。

指定された場所へまた走る。



「芹那!!!」

「涼太、君…」

指定された場所のドアを開けると、
そこには泣き崩れたように座り込む芹那の母親と、
そんな母親を支えるように肩を抱く芹那の父親がいた。

「オジさん、オバさん、
芹那、は…」

俺の言葉に嗚咽をあげる芹那の母親。

「芹、那…」

見たくないものが目に飛び込む。

目を反らしたいのに、反らせない。

理解なんてしたくないのに、

泣き崩れる芹那の母親が、

答えを導き出す。


「…涼太君、
芹那に、
芹那に、別れ、を…」

そこまで言って、芹那の父親は母親の肩を抱いたまま
泣き崩れた。