コンコン
「芹那、入るぞ」
ノックをしてドアを開けると目にうつるのは、
床に座り込んで泣いている芹那だった。
「…芹那、身体冷えるぞ。
椅子に座ろう」
そう声をかけて芹那を立ち上がらせ、椅子に座らせる。
「…大丈夫、じゃないよな」
俺だってすぐに病気を受け入れられなかった。
ましてや芹那は今日、はっきりと自分の病気を突き付けられたんだ。
そのショックを俺は全ては理解出来ないだろう。
「…お兄ちゃん」
ポツリとこぼれた言葉はとても小さくて。
そして、震えていた。
「…私、すごく幸せだったんだ」
そう言って顔を上げた芹那は、涙は止まっていたが悲しみや苦しみを隠しきれない様に、無理に笑っていて痛々しい。
「お父さんもお母さんも優しいし、尊敬できるし大好き。
もちろん、お兄ちゃんも優しくて大好き。
それに、涼太も…」
「…ああ」
「よく言うでしょ?
人の幸せは平等だって。
私、今まで幸せ過ぎたのかな?
だから、平等を保つために病気になったのかな?
今まで幸せだった分、これから病気に苦しめって事なのかな?」
「芹那、それは違う」
「こんなのひどいよ!」
一度は止まっていた涙がまた芹那の目から溢れ出す。
「歩けなくなって食べれなくなって、しゃべれなくなって人に迷惑かけて寝たきりで過ごなきゃいけないんだよ!?
そんなの、私生きてる意味ないじゃない!」
「落ちつけ、芹那。
今すぐそうなる訳じゃない。
少しでも進行を遅らせる事は出来るんだ。
そのためにこれから投薬とリハビリを頑張っていくんだ」
俺まで取り乱す訳にはいかない、
冷静にそう、芹那に言い聞かすが、
芹那は嗚咽交じりに泣きながらやり場のない苦しみを吐き出す。
「そうなるって分かってて、
治る事もないのに、何で頑張らなきゃいけないの!?」
「父さんも翔太も言ってただろ?
希望を捨てずに頑張ってほしいって」
「頑張ったら治るの!?」
「可能性はゼロじゃない、
リハビリを頑張っている間に治療法や治療薬が見つかるかも知れないんだ」
「そんなの確証ないじゃない!
こんな…、
歩けなくなるとか、
寝たきりとか…
…涼太に、嫌われちゃう…!」
!!
…そうだ、芹那はまだ17歳の女の子なんだ。
好きな相手にこれからの自分がどう見られるか、
もしかしたら嫌われるんじゃないか、
そんな恐怖が強くて当たり前だ。
「…やっと、涼太に素直に好きって言えるようになったのに。
涼太に、好きだって言ってもらえたのに。
…こんな、病気になった私じゃ、
涼太、私の事嫌いになっちゃう…」
「芹那…!」
大粒の涙をぼろぼろと流す芹那を抱きしめ、あやすように背中を擦る。
「俺は、
俺は何があろうと芹那の味方だから…!」
「お兄ちゃん…」
出てきたのはありふれた言葉。
だけど、無責任に
大丈夫だ、
なんて言えない。
涼太が、芹那の病気を知った時、
涼太が芹那の元を離れないなんて保証はないんだ。
「…ごめん、
ごめんな、芹那…」
代われる物なら代わりたい。
だけど、どんなに願ってもそれは無理だから。
だから、せめて…
「俺に出来る事は何でもするから。
だから、頑張ってほしい。
諦めないでほしい。
一緒に、頑張ってほしいんだ」
ずっとそばで支えるから。
君が心折れそうな時は、
全力で支えるから。
だから、
だから生きていく事を
嫌にならないでくれ。
「芹那、入るぞ」
ノックをしてドアを開けると目にうつるのは、
床に座り込んで泣いている芹那だった。
「…芹那、身体冷えるぞ。
椅子に座ろう」
そう声をかけて芹那を立ち上がらせ、椅子に座らせる。
「…大丈夫、じゃないよな」
俺だってすぐに病気を受け入れられなかった。
ましてや芹那は今日、はっきりと自分の病気を突き付けられたんだ。
そのショックを俺は全ては理解出来ないだろう。
「…お兄ちゃん」
ポツリとこぼれた言葉はとても小さくて。
そして、震えていた。
「…私、すごく幸せだったんだ」
そう言って顔を上げた芹那は、涙は止まっていたが悲しみや苦しみを隠しきれない様に、無理に笑っていて痛々しい。
「お父さんもお母さんも優しいし、尊敬できるし大好き。
もちろん、お兄ちゃんも優しくて大好き。
それに、涼太も…」
「…ああ」
「よく言うでしょ?
人の幸せは平等だって。
私、今まで幸せ過ぎたのかな?
だから、平等を保つために病気になったのかな?
今まで幸せだった分、これから病気に苦しめって事なのかな?」
「芹那、それは違う」
「こんなのひどいよ!」
一度は止まっていた涙がまた芹那の目から溢れ出す。
「歩けなくなって食べれなくなって、しゃべれなくなって人に迷惑かけて寝たきりで過ごなきゃいけないんだよ!?
そんなの、私生きてる意味ないじゃない!」
「落ちつけ、芹那。
今すぐそうなる訳じゃない。
少しでも進行を遅らせる事は出来るんだ。
そのためにこれから投薬とリハビリを頑張っていくんだ」
俺まで取り乱す訳にはいかない、
冷静にそう、芹那に言い聞かすが、
芹那は嗚咽交じりに泣きながらやり場のない苦しみを吐き出す。
「そうなるって分かってて、
治る事もないのに、何で頑張らなきゃいけないの!?」
「父さんも翔太も言ってただろ?
希望を捨てずに頑張ってほしいって」
「頑張ったら治るの!?」
「可能性はゼロじゃない、
リハビリを頑張っている間に治療法や治療薬が見つかるかも知れないんだ」
「そんなの確証ないじゃない!
こんな…、
歩けなくなるとか、
寝たきりとか…
…涼太に、嫌われちゃう…!」
!!
…そうだ、芹那はまだ17歳の女の子なんだ。
好きな相手にこれからの自分がどう見られるか、
もしかしたら嫌われるんじゃないか、
そんな恐怖が強くて当たり前だ。
「…やっと、涼太に素直に好きって言えるようになったのに。
涼太に、好きだって言ってもらえたのに。
…こんな、病気になった私じゃ、
涼太、私の事嫌いになっちゃう…」
「芹那…!」
大粒の涙をぼろぼろと流す芹那を抱きしめ、あやすように背中を擦る。
「俺は、
俺は何があろうと芹那の味方だから…!」
「お兄ちゃん…」
出てきたのはありふれた言葉。
だけど、無責任に
大丈夫だ、
なんて言えない。
涼太が、芹那の病気を知った時、
涼太が芹那の元を離れないなんて保証はないんだ。
「…ごめん、
ごめんな、芹那…」
代われる物なら代わりたい。
だけど、どんなに願ってもそれは無理だから。
だから、せめて…
「俺に出来る事は何でもするから。
だから、頑張ってほしい。
諦めないでほしい。
一緒に、頑張ってほしいんだ」
ずっとそばで支えるから。
君が心折れそうな時は、
全力で支えるから。
だから、
だから生きていく事を
嫌にならないでくれ。