「芹那、大丈夫かしら…」

そう話す母さんは、芹那が心配で堪らないのだろう、
帰ってからずっと落ち着かない様子だ。


「…やっぱり、告知は早かったのかしら」


(どうして、私なの…?)
そう言って幼い子どものように泣きじゃくった芹那。
流れ続ける涙が芹那の気持ちを表していた。


「…芹那は自分で病気の事、気がついていた。
後から分かるより、今話した方が芹那のためだ」

それでも、これから自分がどうなるのか、
自分はこれからどうやって生きていくのか、
不安で不安で堪らないだろう。
治療薬も治療法もない、
完治した例もない、

だけど、俺は…

「俺は、諦めない」

「棗…?」

「俺は芹那に生きてほしい。
芹那に笑って生きてほしい。
病気だからって、諦める事はしてほしくない。
この病気はまだまだ未知の領域だ。
だからこそ、治療薬や治療法が見つかる可能性もゼロじゃない」

日々進歩する医学、
芹那の病気だって、
治る可能性がゼロじゃないんだ。


「信じよう、母さん
芹那を」

芹那はきっと、
誰よりも強いから。


「芹那の様子みてくる。
母さんはいつも通りにしてて」

「…分かったわ、
芹那の事、お願いね。
母さんはいつも通り、ご飯作ってるから」

「ああ」

芹那、
俺は何があってもお前を守るから。



それが少しでも、
俺から芹那への恩返し、だから。











なぁ芹那、
君が俺の手を握ってくれたあの日から、

俺は君の本当の兄になれたんだ。

だから、今度は俺が
君を暗闇から救うよ―。