「落ち着いたか?」

「うん…」

あれから涼太は、泣きじゃくる私をずっと優しく抱きしめてくれた。

「ごめんね、あんな急に…。
訳わかんないよね」

泣いて泣いて、少し落ち着いた私は、
涼太を部屋に通してコーヒーを淹れる。

「いいよ。
ただし、泣くのは俺の前だけにしろよ?」

「え?どうして?」

「…何か嫌じゃん、好きな女が自分の知らないとこで泣くとか」

そう、少しぶっきらぼうに言った涼太は、
耳まで赤く染まっていた。

「だから!
何かあったら俺の前だけで泣く事!
…お前が泣き止むまで、どんだけでもそばにいるから」

「…うん!」

「よし!」

…不思議、
さっきまで真っ暗な暗闇にひとり取り残されたみたいに思ってたのに、
涼太の言葉ひとつで、
涼太が隣にいるだけで、

暗闇から引き上げられる。



「…あのね、涼太」

「ん?」

いきなり泣きじゃくって、
涼太だって訳わかんないはずだ。

ちゃんと話さなきゃ。

だけど、どう話したらいいのか分からない。

最近、自分の身体がおかしいのは自分で自覚してる。
自分の身体なのに、自分の身体じゃないみたいな感覚に襲われる。

それは、さっきテレビでみた病気の女の人と一緒で。

だけど、私の思い込みかも知れない。
でも……!

「いいよ、無理に話さなくて」

「え…?」

思いがけない涼太の言葉に
涼太を見ると、
涼太は優しく笑って私の頭を撫でる。

「言いたくない事無理に話さなくていいって」

「涼太…」

「芹那が話したくなったら、その時は何時間でも聞いてやっから」

「…ありがと…!」

涼太の暖かさが嬉しい。
涼太の優しさが嬉しい。


だから、
だから…、

「涼太、私ね…」

もう一度、涼太の胸に飛び込み、
私は口を開く。


「明日、もしかしたら変わっちゃうかも知れない」

「変わる…?」

「うん。
…詳しい事、今はまだ言えないけど。
でも、涼太の事好きな気持ちだけは、
何があっても変わらないから」

そう、明日、
もしも私の考えてる最悪のシナリオが待ってるとしても、

私の中の涼太への気持ちは、

絶対、変わらない。

だから、


「…好きで、いさせてね」









例え、
この先離れる事になっても、

涼太の事、
好きでいても、いいよね―?