「そんな緊張しなくていいよー、リラックスリラックス!」

診察室に入るとお兄ちゃんと中山さんが待っていた。
中山さんは私の緊張や不安を取り除くかの様に笑顔で話しかけてくれる。

「とりあえず最近の芹那ちゃんの様子はお父さんや棗に聞いたんだけどね、
芹那ちゃん、最近よく転ぶんだって?」

中山さんに言われて思い返すと、
確かに最近転ぶ事やふらつく事が増えた気がする。

「…そういえばそうかも。
私、昔から何もないとこで転んだりするんですよね」

「そんなおっちょこちょいの芹那ちゃんも可愛いー!
って棗!謝るからその拳しまって!」

「お前がふざけた事ぬかすからだろーが。
さっさと診察しろよオラ」

お兄ちゃんと中山さんのやり取りに、少し緊張がほぐれる。

「じゃあ芹那ちゃん、ちょっとこっちに立ってくれるかな?」

中山さんに言われて私が立ち上がると、
中山さんは私から距離をとる。

「靴を脱いで、俺のとこまで真っ直ぐ歩いてくれるかな?」

何の検査なのか分からないけど、
中山さんがお医者様として優秀なのはお父さんとお兄ちゃんから聞いてる。
無意味にやらせてなんかいない事は理解できる。

「…ありがとう。
じゃあ次は片足で立ってみようか」

言われた通り、私は片足で立ってみる。

「あ、あれ…?」

何故か上手く立てない。
足は震えるし、バランスが保てない。


「…うん、ありがとう。
じゃあ次はMRI、頭の中を撮る検査をするね。
準備するから、待合室で待っててね」


そう言われて私はお兄ちゃんと一度待合室へと戻る。

…私、あんなにバランス感覚悪かった…?

それに、MRIとか、
ただの健康診断で撮ったりしないんじゃ…。

「…お兄ちゃん」

「ん?何だ?」

「私、何の検査してるの…?」


「!!
…言っただろ、ただの健康診断だよ」

そう言って私の頭を撫でる。


「そう、だよね…」

でもね、お兄ちゃん、


お兄ちゃん、何で、




私の目を見てくれないの―?