「検査って何するのかな?」

病院へいくため俺の運転する車に乗る芹那は
少し不安そうな表情をしている。

昨日、父さんから病院で検査を受けるように言われた芹那。
病院嫌いの芹那ははじめ
どこも悪くない、
検査なんか必要ないと言って抵抗していたが、
来年は受験だし、今の内に念のため受けるだけだ、
父さんも母さんも、棗だって受けている、
そう言われたら芹那もさすがにそれ以上は抵抗出来ず、
渋々だが検査を受ける事を了承した。


「そんな身構える必要ないって。
ちょっとした検査だし、終わったら美味しいランチに連れてってやるよ」

なるべく平静に、
いつもと変わらない態度で芹那と接するも、
ハンドルを握る手が冷たくなっているのが分かる。


「痛い事とかない?
注射とか…」

「まぁ必要に応じて採血とかはあるかもしんないけど。
そんな痛くないって。
何なら父さんに頼むか?」

「お父さんの専門は心臓じゃん」

「だからだよ。
繊細な手術ばかりしてる父さんなら採血なんて1発ですぐすむだろうし」

俺は病院嫌いとかないし、むしろ昔から病院へいくのは好きだという変わった子どもだったから、
病院へ連れていくのに手間取った事はなかったらしいが、
反対に芹那は大の病院嫌いで近所の小児科に連れていくだけで大変だった。

「そういや昔は予防接種に大泣きしてたな」

「だってあの消毒の独特な匂いからもう恐怖だったし」

「俺はあの匂いけっこー好きなんだけどな」

「そーゆうとこ、お兄ちゃん変わってるよね」

他愛もない話をしながら車を病院へと走らせる。
だけど、心臓はうるさくドクドクと音を立てていた。