夜、涼太達も帰った後、
私は部屋でひとり涼太に貰ったネックレスを手に幸せな気分に浸る。

楽しくて、幸せな1日だったなぁ。
大好きな涼太と1日過ごせて、
滅多に帰って来れないお兄ちゃんも帰って来て、
夜はお父さんとお母さん、それに涼太の両親も一緒に皆で過ごせて。

…それに、
初めてキス、をした。

初めてキスをする時ってどうするんだろう?
タイミングとか、
目はいつ閉じたらいいの?
雰囲気とか、ちゃんと作れるかな?

とか勝手に色々悩んだりもしてたのに。

タイミングだとか、
雰囲気だとか、
そんな事何も考えずに、自然にキスしてた。

でも、触れあった唇も、手のひらも、
全部全部、暖かくて。



幸せだな、
って本当に心から思った。

そして、
本当に本当に、
涼太の事が大好きだなって、
心の底から思った。



コンコン
「芹那」

ひとりで幸せな気分に浸っていたら、
部屋のドアをノックしてお兄ちゃんが声をかけてきた。

「な、何?」

赤くなってる頬を見られるのが恥ずかしくて、
少し俯いてドアを開ける。


「風呂沸いたぞ、先に入るだろ?」

「あ、うん。
先にいこうかな」

そう言って、着替えを取りに部屋のチェストへ向かう。



ガクッ

!!?

その瞬間、足がもつれた。

こける…!

ガターンッ!


そう思った時には遅くて、気づいたら私は床に倒れていた。

「芹那!?」


私の倒れた音に、部屋を出ていたお兄ちゃんが慌てたように戻ってくる。

「ご、ごめん、
何か足がもつれちゃって」

「大丈夫か?」

「うん、大丈夫」

お兄ちゃんに支えられながら立ち上がると、
音に驚いたんだろう、
お父さんとお母さんも何事だという様に部屋へと入ってきた。

「何今の音…、
どうしたの芹那!?」

「ごめんなさい、足がもつれちゃって転んだだけなの」

「大丈夫なのか?
赤くなってるぞ?」

そう言ってお父さんが私の顎付近に触れる。

その瞬間、ピリピリとした痛みが走る。


「転んだ時にぶつけちゃったのかな?」

「…手は?」

お父さんが私の腕を持ち、手を見ながら聞いてくる。

「手?
別に何ともないけど…?」



対した事ないと言ってもなおも心配そうに私を見る3人。

「本当に大丈夫だから!
私先にお風呂入るね」

私の言葉に、お母さんが着替えを持ってくれ、
お兄ちゃんは一緒に階段を降りてくれる。







この時、
お父さんが何か不安そうに難しい顔をしている事に、
私は気づいていなかった。