外に出ると肌を突き刺すような寒さに思わず身震いする。

空は雲ひとつなく、正に快晴と呼ぶに相応しい。

12月24日、
クリスマスイブ。

子どもの頃からこの日は特別な日。
朝からテレビだっていつもとは違うクリスマス特集。
普段見慣れた街並みも、たくさんの飾り付けでキラキラしている。
夜になるとイルミネーションが街を輝きでいっぱいにする。

そんな街並みを歩く人達は、
イルミネーションにも負けない位にキラキラと幸せそうに輝いている。

去年まで、クリスマスイブは昼間は涼太と買い物にいったり家でゆっくり過ごしていた。
そして夜はお互いの家族皆でパーティー。

この時に、私は涼太とプレゼントを交換していた。

パーティーの後は家に戻って幸せな気分で眠りについていた。


そして、今年のクリスマスイブは…



「涼太!」
玄関を出ると、ちょうど家から出てくる涼太が見えて、
私は嬉しくなって少し大きな声で涼太を呼ぶ。

「おっ、タイミングバッチリだなー」

そう言って笑う涼太に私は小走りで近づく。

「おはよ、涼太!」

「おはよ、芹那」

向かい合って顔を見て挨拶、
これは昔から私達の間で変わらない事。
どれだけケンカしていても、次の日には必ずお互い顔を見て挨拶する。
そうしたら、何だかケンカしていたのが馬鹿らしくなってそのまま仲直り出来たんだ。


「じゃ、いくか」

「うん!」

自然に差し出される涼太の手を握る。
そのまま涼太は私の手を引き歩き出す。

今年のクリスマスイブは、涼太と海にいった後、
イルミネーションを見に行く。
って言っても、夜はやっぱりお互いの家族皆でパーティーだから、門限は19時という、
恋人達にはちょっとツラい条件付きだけど。


「やっぱ寒いなー」

「どうせ寒いならもっと寒くなって雪でも降ればいいのにねー」

「げっ、ヤダよ雪とか。
寒いし冷たいし電車止まるし」

「もー!
せっかくのクリスマスイブにそんな夢のない事言わないでよ!」

他愛ない話をしながら駅へと向かう。

寒い冬に何でわざわざ海へいくのかと
周りからは言われたけど、
私は冬の海が好きだったりする。

昔から、
冬の海、冬の空、冬の空気とか、
寒いけど私は冬という季節が好きなのだ。
冬というだけで何だか特別な気分に浸れる。

そんな私につきあわされて涼太は冬の海にも何度かつき合ってくれていた。

だけど、今日はクリスマスイブ。
そして恋人になってから初めての海。


そんな特別な今日を、
私はずっと楽しみにしていた。








幸せなクリスマスイブは

はじまったばかり。


私の胸は、

期待と楽しみ、
幸せと嬉しさでいっぱいだった。





こんな風に、
これからも涼太とふたりで
たくさんの初めてや楽しみを過ごしていくんだろう、



そう、信じていた。




だけど、

暗闇は音も立てずに近づいていたんだ―。