学校、勉強、


家族、友だち、猫、


おしゃれ、美味しいお店、噂話、恋話



そして、


大好きな幼馴染で、彼氏。




そんな大切で大好きな人に囲まれて毎日を楽しく過ごしていた。



どこにでもある、平凡な生活、
どこにでもいる、普通の女子高生。


それが私、
久保田芹那だ。


17年間、不自由なく生きてきた。
平凡でありふれた、だけど幸せな毎日を生きていると思う。






「クリスマスはイルミネーション見に行きたいなー」

夜、電話越しに私の話を聞いてくれるのは、
幼馴染で彼氏の涼太。


「あぁ、お前昔からそういうの好きだもんなー」

耳へと心地よく染み渡る涼太の声が落ち着く。



涼太とは私がこの家に引っ越してきて出会った。
生まれてからずっと過ごしてきた場所を離れて
慣れない場所で知らない人達に囲まれての生活に不安と寂しさ、悲しみしかなかった私に、
涼太が声をかけてくれた。


「仕方ねーから一緒に遊んでやるよ!」

ぶっきらぼうに、少し乱暴にそう言った涼太の横顔は真っ赤だった。


嬉しかった。
例えオバさんに言われたからでも、涼太は私を遊びに連れ出してくれた。
私を外の世界へ、連れ出してくれた。


その日から私の中で涼太は特別になった。


涼太は私にたくさんの事を教えてくれた。
楽しい事も、いたずらも、
悲しい事も、
全部涼太が教えてくれた。

そして、

人を好きになる気持ちも。




幼馴染でもいい、
何て思いながら、
私は本当は涼太の特別になりたかった。

涼太をひとりじめしたかった。


だけど、
ありきたりな言い訳だけど、
幼馴染という関係も壊したくなかった。

もし、私が涼太に想いを伝えたとして、
その返事が私の望むモノじゃなかったら?

きっとそれでも、優しい涼太は私に変わらず接してくれるとは思う。

だけど、
涼太の特別になれないのに、
涼太をひとりじめ出来ないのに、
変わらない態度をとられ、
ただの幼馴染でいるのは嫌だった。

それならそのまま、
微かな希望を持ちながら変わらない幼馴染でいよう、
そう思ってた。



だけど、
そんな幼馴染の関係は涼太のひと言で変わった。

うぅん、それだけじゃない、

涼太の行動で、

私の運命だって変わったんだ。


あの日、
涼太が私を突き飛ばして助けてくれなかったら、


私は今、生きていなかったかも知れない。


私はあの日、
涼太に救われた。

それだけじゃない、

ずっとずっと願っては胸に閉じ込めて、押し込んで、
押さえつけていた、
【涼太の特別になりたい】
そんな思いまで、叶った。








「じゃあ、また明日ね。
おやすみ」

「あぁ、おやすみ」

電話を切り、幸せな気持ちのまま私は眠りにつく。

今日も幸せだった。

明日もこの幸せが続きますように、


そう、祈りながら―。















私は2度、涼太に救われた。

1度目は、私を外の世界へ連れ出してくれた時。

そして2度目は、

私の命を救ってくれた時。



涼太に救われたこの命、
ずっとずっと大切にしよう。


そして、

こんな私を昔からずっと支えてくれた涼太を、

私は絶対大切にしよう。










そう、思っていた。