運命は変わった。






「おはよー、涼太!」

朝、いつも通り芹那が俺を迎えにくる。

「今日も寒いねー」
そう言った芹那の頬と鼻は寒さから赤く染まっている。

青く高い空、
ピンとした澄んだ空気。

「でも、私冬の空って好きなんだよね」


白い息を吐きながらそう言って笑う芹那の手を握る。




今日は11月20日、

あの日、9月20日に戻った日だ。


あの日と同じ空、冷たい風、澄んだ空気。

違うのは、

俺の隣に芹那がいる事。


あの日からもう一度、この2ヶ月間を過ごした。
芹那がいる事で俺の知っている2ヶ月間と多少の違いはあるものの、大体は同じ事を繰り返した。


不安がなかった訳じゃない。
いつか芹那が消えてしまうのではないか、
いつ、これは夢で
芹那がいない世界が現実だと言われるのか、
そう考えると怖かった。

夜、眠るのが怖かった。

朝、目覚めるのが怖かった。




だけど芹那はいつも俺の隣にいた。

朝になると芹那が迎えにくる。

夜は芹那がおやすみと言ってくれる。


そして、今日も芹那が隣にいる。


それだけでたまらなく嬉しかった。



「今年のクリスマス、どうする?」

「もうクリスマスの話かよ?」

少し苦笑しながら言うものの、
先の事を話せるのが嬉しい。


「だって今年のクリスマスは去年までとは違うでしょ?」

「まぁ、つきあい始めてからは初めてのクリスマスだしなー」

俺の言葉に顔を少し赤くしながら、
照れたように笑う芹那。







ここから先の未来を俺は知らない。

だけど、この先の未来、

芹那がいたらそれだけで幸せだ、





そう、信じていた。





そんな俺の当たり前にあると思っていた幸せが崩れる足音は、




もう近くまで迫っていた―。