「ねぇ、本当に
ほんとーに大丈夫なの?」

家を出て学校まで歩く中、
本当に心配そうにそう聞いてくる芹那。

「大丈夫だって、
なーんか寝ぼけてたっつーか」

「本当?
ならいいけど…」

俺の言葉に少し安心したような顔になるけれど、
やっぱりまだ少し不安そうな顔も覗かせる。


…あれから混乱する頭で必死にひとつずつ確認していった。

今日が9月20日なのは間違いなかった。
夢じゃないかと思ったが、
芹那の暖かさは、夢じゃないと理解するのに充分だった。


9月20日、
忘れもしないこの日に何故か俺は戻れている。

何故なのかは分からない。

だけど、もう理由なんてどうでもいい。

今、俺の目の前に芹那が生きているのだから。

俺がやるべき事はひとつ、

今日、芹那の運命を変える。

そして、明日も明後日も、
この先の未来をずっと、
芹那と一緒に生きる。


「芹那」

俺の呼び掛けに振り向く芹那。

「…ごめんな」

「え?」

俺の言葉に今度は驚いたような、
そして訳が分からないという顔を見せる。

「ねぇ、やっぱり今日の涼太おかしいよ」

今のごめんは、昨日までの守れなかった芹那に。

そして…


「俺、もうお前の事離さねぇから」

これは、今日これからの芹那に。


「なっ!
何言ってんの!?」

顔を赤くしてそう叫ぶ芹那の手を俺は握る。

「りょ、涼太!?」


「離さねぇって言ったろ?」

そう、もう離さない。
この手も、芹那も。


「…やっぱり今日の涼太、変…!」


そう言いながらも俺の手を握り返してきた芹那。

芹那を見ると目が合った。

真っ赤な顔で、
だけど、嬉しそうに笑う芹那に、
俺は溢れそうになる涙を必死で耐え、


芹那の手を強く握りしめた。


芹那の存在を確かめるように。

芹那を離さないように。

強く、強く―。