百万人の愛を選ぶか、一人の愛を選ぶか〜ロボットの選択〜

ガブリエラがラファエルの肩を掴む。しかし、ラファエルは「父さんだって聴きたいだろ!」と言った。

「どうせミカエラはロボットなんだ。……悲しいなんて思わない」

みんながミカエラを見つめる。

ミカエラはライブの時のようにお辞儀をし、前を見た。そう、私はロボット。感情なんてない。そうミカエラは言い聞かせる。

歌うのは本当に久しぶりだ。歌うことは好きだ。ミカエラは自分の一番好きな歌を歌うことにした。

口を開こうとした刹那、ミカエラの頭の中に、カイとの思い出が蘇る。

初めて会った日の夜は、ポールと三人で夕食を作って食べた。朝早く目が覚めた時は、二人で散歩をしたりした。雨で濡れたカイを、タオルで拭いた。熱を出したカイに、お粥を食べさせた。

『ミカエラ、何か手伝うことない?』

『ミカエラ!どうしよう!宿題終わらないよ!』

『ミカエラ、ありがとう』

『いつまでも、待ってる……』

自分を愛してくれた人は、もうこの世にいない。この先もずっといない。何百年、何千年と待っても、家に帰ってくることはない。もう一緒にご飯を食べたり、笑い合うことは……できない。

ミカエラは、誰からも好かれるように作られている。これから先も、誰かのために歌って、働いて、愛されていく。しかし、それをミカエラは拒みたかった。嫌だった。