百万人の愛を選ぶか、一人の愛を選ぶか〜ロボットの選択〜

ようやくミカエラは口を動かすことができた。カイは微笑む。

「いつも……ありがとう……。君の歌が好きだった……。奪ってしまって、ごめんね……。ずっとずっと愛している……」

命が、消えていく。目を閉じたカイがもう一度目を開けることはなかった。

人間は、歳をとりやがて死んでいく。しかし、ロボットにはそれがない。永遠に生き続けるのだ。

「……カイ……」

ミカエラは震えが止まらなかった。何かがあふれていきそうで、でも流れてこない。

ミカエラはカイを抱きしめ続けた。温かかった体が冷たくなって、固くなっても、抱きしめ続けた。



カイのお葬式には、大勢の人が参列した。ミカエラもカイが土に埋められていくのを見守っていた。

ミカエラはずっと不思議に思っていた。ポールが死んだ時とは違い、この胸にまるで穴が空いたような感覚がする。

そんな時、ラファエルが言った。

「父さんは、若い頃ミカエラに歌を歌ってもらってたんだって!今ここで歌ってもらおう!」

黒いスーツやドレスを着た人々が、「それは素敵だ!」と言い手を叩く。

「ちょっと……お父さんが死んだばかりなのよ!ミカエラの気持ちは……」