百万人の愛を選ぶか、一人の愛を選ぶか〜ロボットの選択〜

カイはどんどん歳をとっていく。しかし、ミカエラはいつまでもカイと出会った時のままだ。

二人を引き離す悲しい運命があるということにミカエラが気づくのは、もう少し先のお話。



数年が経ち、カイは六十六歳になった。カイは仕事を定年退職し、家でゆっくりと過ごすようになった。

「カイ、コーヒーです」

「ありがとう」

カイは微笑み、シワだらけの手でカップを受け取る。

「ラベンダーがきれいに咲いているね」

カイは揺り椅子に座り、庭を眺める。庭には、ガブリエラたちが植えたラベンダーが紫色の花を咲かせていた。

「本当ですね」

カイと見る景色は、いつも以上に美しく見える。全てが特別に思える。

「ミカエラ」

カイがミカエラを見つめ、その手を取る。

「はい、どうしましたか？」

「ミカエラ……」

カイは真剣な目で、ミカエラを見つめる。そして口を開いた。

「ラベンダーの花言葉は、『あなたを待ってる』。僕はいつまでも君を待つ。どれだけ離れても」

なぜカイがそんな台詞を言うのか、ミカエラにはわからない。しかし、胸が温かくなり嬉しくなる。

「……はい」