次にミカエラが目を開けると、ポールの横に小さな男の子が立っていた。ポールに引っ付き、恥ずかしそうにミカエラを見ている。黒い髪に、まるで暗闇の中の炎のような赤い目の男の子。

「初めまして、私はミカエラ。今日からあなたの家族です」

ミカエラは頭の中に浮かんだ言葉を言う。男の子は驚いて目を見開いた。

「は、初め……まして？」

ぎこちない表情で、男の子は言った。

「あなたのお名前は？」

ミカエラが訊ねると、男の子は不安そうな顔でポールを見つめる。

「大丈夫じゃよ。名前を教えておやり」

ポールが微笑む。男の子は頷き、ミカエラを見つめた。

「カイ。僕は、カイ。八歳」

ミカエラはカイに近づき、手を差し出して微笑む。

「よろしくお願いしますね、カイ」

カイは恐る恐る、ミカエラの手を取った。

「……よろしく、ミカエラ」

こうして、二人の物語が始まった。



ミカエラは朝ポールが設定した時間に起動し、朝ご飯を作り、洗濯や掃除をする。ロボットなので疲れることがなく、休憩などしない。

食事はポールやカイとともに摂るが、排泄はしない。ロボットなので病気にかかることがない。体はもちろん、心も。