「…………」

「腕が痺れた」


不意にそう言って離れた腕に、少し淋しくなる。
身体を離して見上げた竹内くんの顔は、さっきよりは赤みが引いていた。

バツが悪そうに私から目をそらした顔がこれまた新鮮で、2回目の心拍上昇を感じる。

そのままがあっと耳まで熱くなってきてこれはやばい、
そう思って無意味に空を仰ぐと、


「あ、
月がでてる」


真っ黒な空に遠く浮かんだ月があった。

しばらく月を見つめて、顔を戻すと私の真似をして空を見上げた竹内くんがいた。

いつもより無防備なその姿はいとも簡単に私の意思とか理性とか、そんなものを崩して。

気づけば地面を蹴り上げて、目の前の制服に飛びついていた。

「竹内くんだいすき、もう何回も言ったけどほんとにすき、だいすき」

「え、ちょっと待っ」

「ずっとずっと好き。だいすき、竹内く、」


その先は言えなかった。
大きな手が私の口を覆っていたからだ。

「好きだ、」




口を覆われたまま、
大きな身体にしがみついたまま。





「ふぉぉひっふぁ…」

「あ、悪ぃ」

口を動かした私に慌てて手を離してくれた。

少し汗ばんだ手が離れて唇が冷たい空気に触れた。



「もう一回、
いまのもう一回おねがいしやす…」

「…は?一回で聞きとれよもう言わねえ」

「…っそこを何とか!!お願いしますもっかい!!もっかいだけ!」

詰め寄る私にまた顔を赤くした竹内くんは、

私を抱きかかえるような体勢だったことに気付いたのか、ぎこちなく身体を離した。