亮太くんの死んだ目をした顔を思い出して、今さら少し良心が痛む。
ちょっと悪いことしたかな、まあいいか。
明日ポッキーでも買って謝ったら許してくれるだろう。

「…おい」

後ろから聞こえた低い声に意識が引き戻される。

そうだ、竹内くんと話さないといけない事があったんだ。

振り向いた瞬間、
正面に向いた竹内くんの腕が私の頭へ伸びて引き寄せた。


「は、」


びっくりして思わず鞄を落としてしまった。
思っていたより優しい腕は、心配なくらい熱い。


思い出したように騒ぎ出した心臓に、この調子で心拍数跳ね上がって死ぬんじゃないか私、
そんなことを本気で思った。

「た、た、
たけうちくん」

うわ言のように呻けば、耳元で小さく聞こえたのは


「…悪かった」


何に対してなのかも分からない、謝罪の言葉だった。


何に謝っているのか

竹内くんの心がわからなかった。

だけど、
いいよ、大丈夫だよ、

そんな気持ちで彼の大きな背中をぎこちなくさすった。