知らない知らない聞きたくない。

まさに今の私の状況である。


ヒカルが去った後のがらんとした教室で、私は未だに机から動けずにいた。

本当に良かったの?

竹内くんがせっかく話しをしてくれるチャンスだったのに。

私の心からそんな言葉たちが湧き出してくる。
後悔だらけの感情を無理やり押し込めて、私は思い切り顔を上げた。


「チーッス」


顔を上げたら、

まぶしいくらいに笑顔の亮太くんがいた。


「何してんすか」
「うーん綾瀬さん待ってた」
「言い方恐ろしく棒読みだけど大丈夫?」
「いやほんとほんと、一緒に帰ろーよ」

ほらほら早くカバン持って、
そう急かしてくる亮太くんの言うことを聞いて、しぶしぶ腰を上げる。

外は気づけば真っ暗で、亮太くんは一体どこで私を待っていたんだろうと思った。



「腹減ったねー」

「はあ…」

ふらふらと歩く亮太くんは何を考えているのかさっぱりわからない。

「気づかなかっただけで実は私と亮太くんてこんな一緒に下校しちゃうくらい仲よかったのかな」

「え、俺ら親友じゃん。ズッ友じゃん。あの日夕陽に永遠の絆を誓った仲じゃん」

「あの日っていつだよそんな日私の記憶に一切無いよ」

「まーまー、綾瀬さん最近元気ないじゃん?そう言う時って1人でいるとやばいでしょ、
だからこれからは俺がついててあげるよ」

恩着せがましく言った亮太くんは何を企んでいるのか、やたらと笑顔で。

「…ヒカルがいるから間に合ってるんだけど」

「ヒカルちゃんも色々忙しいかもしんないし、まあとりま俺がついててあげるよ」

「とりま…」


次の日から、
本当に亮太くんは何かというと私のところに来るようになった。

課題がどーのとかあの先生はこうだとか、新しくできたカフェの話しとか。
どうでもいい会話をして、満足そうに笑っていた。