夕暮れの街並みを背景に、少し前を歩く竹内くんに必死でついていく。
彼はなかなか脚が長くて、私の短い脚ではついていくのがやっとだ。


もっと急がないと、と速度を速めた途端に竹内くんはピタリと脚を止めた。

お陰で彼の大きな背中に思い切り顔を打ち付けた。
なんかいい匂いがした。引っ付いたついでに深呼吸しておこう。


「おい変態、何やってんだよ」

ぺしん、と可愛い音をたてて私のおでこが叩かれる。おでこを抑えて見上げると、眉間に皺を寄せて不機嫌そうにする竹内くんの顔があった。

ついに舎弟から変態へとランクダウンしてしまった私はもう大人しくしていよう、と心の中で決意した。

「た、竹内くん、あの、彼女と別れたって本当?」

「は?」


正確に言えば彼女たち、だけど。

亮太くんに聞いて、と付け加えるとますます不機嫌そうな顔になる。
まずいこと聞いてしまったらしい。

「…だからなに」

竹内くんは眉間の皺をさらに深くして、最高級に不機嫌な低い声で唸るように言った。

だから、なに。

その言葉は思っていたより私にダメージを与えてしまった。


私仮にもあなたに、3度も告白しているのに。

やっぱり私は竹内くんにとって"他人"で、"いてもいなくても変わらない奴"なんだろう。

そう思うと少し悲しかった。