必殺覗き人を捕まえようとホウキを振りかざしやって来たのはやはり姉さんだった。

永島の鼻息より、姉さんはきっと犬の数倍の嗅覚で不審者の侵入に気付いたに違いない。
少しづつその姿をメデューサへと変貌させながら姉さんはこちらへと距離を縮めてきた。

「何やってんのよアンタ達!」 

メデューサの怒鳴り声に永島も正気に戻り立ち上がった。
しかし「アンタ達!」とは・・・ 完璧隠れているつもりだったのに僕の存在など秒殺でバレていたのであった。

ホウキを持った姉さんに永島も戦闘体制になり、魔物と妖怪の睨み合いとなった。

戦いの世界では頂点に位置すると思われるこの二人の睨み合いは凄まじいモノであった。
殺気と熱気が入り乱れ異様な雰囲気と化した裏庭は僕程度の小動物では息苦しささえあった。

核保有国レベルの睨み合いに武装農民程度の僕に入るスキはないと安全を最優先し退散する事にした。

睨み合ったまま微動だにしない両巨頭の脇をそそくさと通り貫け、そして一気に駆け足で逃げた。
全力で走りながら玄関までやって来ると不審者を捕らえるためかワナが張ってあり、僕は顔から地面に転んでしまった。
ワナのロープには小さな竹筒が幾つも仕掛けてあり”カランカラン”と勢いよく鳴り響くと玄関からダラオちゃんが現れ「曲者だぁ~ であえ!」竹笛を鳴らし始めた。
すると奥から母さんが優しい笑顔で来客でも迎えるかのようにこちらに向かっていた。

だが母さんの手にしっかり握られた仕事用工具を僕は見逃さなかった。
その母さんの後ろでは父さんがお気に入りの仮面着用に手間取っている様子だった。