命懸け・・・ でもなかったがなんとかブツは手に入れた。
しかし何とも言い知れぬ罪悪感も残った。

「妹よこんな兄を許しておくれ」と何度も心で呟いた。

翌朝、大事なブツをポケットに忍ばせいつものように学校に向かった。
このポケットの秘めモノは決して他人には見られてはいけない。
・・・運び屋だ。

法律に触れる非合法な品物を持ち歩いていると勝手に思っている運び屋の男は、通い慣れたいつもの通学路をホフク全身で進んだ。
用心の為と交差点で望遠鏡を使いながら左右確認を行うその姿は、用心どころか逆に通行人の注目の的となっていた。
すると突然背後からメガトン級の重力で抑えこまれた。

「しまった! 警察だ、やはり望遠鏡がマズかった」と思った僕は咄嗟に
「すみません、野鳥の会です!」と叫んでいた。
玄関マットのような舌で頭を舐め回され「最近の警察官は職務質問の前に頭を舐めるのか」と振り返ると御主人様だった。
この妖怪はきっとポケットの秘めモノの匂いに誘きよせられたに違いない。

「カスオ~ その驚きようはブツが手に入ったな~」とヨダレを流すその口は耳まで裂けていた。

改めてこの妖怪ワイセツマンは敵に回したくないと思った。

「出せ、出せ」と連呼する御主人様に
「ツノ? ヤリ? 目玉? 僕はでんでん虫じゃないぞ」と思いながら
「みんなに見つからないように持ち出すのは大変だったんだからねッ!」と口を尖らせて言った。
だがその言葉を言い終わらない内に永島は僕の身体を軽々と持ち上げ肩車をしながら走り出していた。
「肩車なんて何年ぶりだろう・・・」永島の肩の上から見る視界は僕が普段見ている地上の光景とは全く違った。

「目線が違うだけでいつもの学校じゃないみたいだ」
と感動しているとオデコをバットで殴られたような衝撃が炸裂し、小学2年生分ぐらいの学力が脳ミソから吹っ飛んでしまった。

「木の枝だ・・・ 景色に見とれてて目の前の枝に気付かなかったんだ・・・」

反動で体が逆エビ状態になった僕は涙目のまま運搬されていった。