僕の家は大家族です。
お父さん、お母さん、オカメ、そして姉さんと旦那さんのマラオ兄さんにその子供のダラオにネコのキン。
したがって下着ひとつ盗むと言ってもそう簡単にはいかないのです。
けして広くもない家に僕以外の六人+一匹。
その14コの目をかわし盗みを働くのは至難の業です。
しかもタンスから盗むのではなく、洗濯前というよく分からん追加オーダー付き。
僕はゆっくり思案を練り、その日を待った。

あの日から御主人様は動物特有のスキンシップのように僕の頭を何度も甘噛みしながら「ブツはまだか」とと催促していたが
「僕は命懸けなんだ」と話すとライオンは頬ずりしながら鋭いキバをチラつかせていた。

オカメと僕は同じ部屋だ。
その部屋にオカメが居る時、他の皆がお風呂場や脱衣場にいない時、僕はその時を静かに待っていた。

そしてチャンスは訪れた。

僕は静かにコンビニのビニール袋をポケットに忍ばせると足音を消して脱衣場に向かった。
居間の方ではテレビを見ている父さんの笑い声が聞こえていた。
自分の家でコソコソと家族の目を気にしながら妹の下着を盗む兄、
一度はCDデビューまで夢見た男が何ゆえにこんな事をしているのかと思うと情けなくて涙が出そうになった。

だが死んでもヤツのアレは飲みたくない。

暗闇の中で洗濯カゴからお目当てのブツを探し出し袋に詰めようとしたその時、誰かが脱衣場へと近寄ってきた。

「ヤバイ!!!」慌てて僕はブツを袋に詰めるとポケットに隠し平静を装った。