「……『ないない』」
そんな可愛い現実、ハモるほどない。
「すず春休み中に彼氏とかできなかったの?」
「…出来たら今頃こんなことしてないよ…。
あ、鞠ちゃんは? ざわさんとは順調?」
「あ、あいつ? めちゃくちゃ普通、順調、結婚」
「結婚!?」
「ばーか、それぐらい順調ってことよ」
自分から言っておいて少し気恥ずかしいのか、顔を少し赤くしてそっぽを向いた鞠ちゃん。なんて可愛らしい。
鞠ちゃんにはとても仲のいい彼氏さんがいる。
通称『ざわさん』 沢口翔平という名前からついたあだ名らしい。
「まあ、考えることは色々あると思うけど、すずも早く素敵な人が見つかるといいね」
「んー…、まあ、まあ」
「……なんかめちゃくちゃ可愛いすずに対して、こんな私がゆうのもなんだけど」
「何言ってんの!やめてやめて恥ずかしい」
ふう、と一息ついて、窓から入った光に手を照らす。
席窓側がいいなあ。 なんて綺麗なお日様なんだろ。
私は中学2年から、高校1年の中頃まであたりの記憶が、曖昧だ。
覚えているもの、覚えていないもの。
全てはあの事故のせいだけれど、もう思い出したくもない。どうせ思い出せないから。
たったの数年しかない学校生活の記憶が曖昧なのはとっても悲しい。悲しい、という簡単な言葉では片付けたくないけれど。
幸いにも周りの友達、先生、家族がこんな私を良い環境で今も過ごせるようにしてくれているのが、1番の感謝だ。
「……鞠ちゃん、ありがとう」
「ん? お腹すいた?」
「…言ってません」
