紺色の布に敷き詰められた小さな宝石、それを撫でる様に駆ける真夏の風、そして静寂に響く僕と彼女、月嶹の声。全てが鮮烈で、今でもまだその感覚が残っている様に感じる。
あの感情も、僕の心をぐるぐると渦巻いている。
『甘く』て思わず蕩けてしまうような感情。胸がきゅうっと締め付けられる感情。
『恋』
僕は今までホンキの恋をしたことがなかった。人を好きになったり、告白したりしたことは何回かある。でも、それは本当に好きだったのかと言われると、少し怪しくなってくる。俗に言う“流行り”に乗ってみただけなのかもしれない。周りの奴らが色恋沙汰に奮闘している姿を見て、少し憧れて、お試し感覚の恋。
(今考えると最悪だな、僕って。)
それにしても、あんなに月嶹をうざったく感じてたのに、こんな感情を抱くのか。