「寒っ...」




会場を出れば、もう外は日が暮れていて



肌寒い風が私の肌を刺す。






やっぱり彼は相変わらず何かを持っている人だった。




一瞬で会場を自分の空気に巻き込んで




見るもの聴くものを夢中にさせる。




一句、一句、しっかり伝えるように歌う彼は




私が初めて聴いた時より



何倍も上手くなっていて




私の知らないところ、見てないところで




彼は血のにじむような努力をしてきたんだろう。





審査が終われば、きっと君から電話が来る




大丈夫。翔太くんならきっと大丈夫だから





携帯の着信音を最大にして




君の連絡を待っていた。