「なんか、久しぶりだね」





責めるつもりなんてこれっぽっちもないのに




私の言葉に、素直に眉を下げる翔太くん。







翔 「なかなか連絡できなくて、ごめん」







「んーん、気にしないでいいから!

忙しかったんでしょ?」






分かってる。分かってるから。




寂しくなかったと言えば嘘になるけど




でも、もう君の顔見たら




大丈夫になっちゃったから。





翔「うん、ごめん」





だからお願い。




笑ってよ。






「入っていいよ?暑いでしょ、冷たいもの入れる...」






翔「や、大丈夫。

この後すぐ行かなきゃいけないから...」






「...あ、そっか!うん。そうだよね」





会えた嬉しさで、忘れてたよ




そうだ、君は




30000分の10人だったね。






翔「今日、来たのはこれ渡したくて」






「...これ、なに?」






渡されたのは





なにかのチケット1枚





翔「9月18日に、最終審査あるんだ

それ、この会場でお客さんの前で歌うことになってて」






「うん?」






翔「華に来て欲しくて

この日に、決まるんだ。全部。

だから、華に見て欲しい。」






そういう彼の目は何かを決意したような顔で




真を貫くようなその瞳は




出会った時の瞳とは比べ物にならなくて




一人の人間として、かっこいい。




そう思ったの。





でも、その傍ら





「うん、分かった!必ず行くね」






ああ、もうすぐかな。




って





心の隅の隅で小さな私が







必死に涙をこらえてた。